「子どもを閉じ込めてしまったんです!何とかならないですか!」
携帯電話が、突然鳴った。
悲痛な声の主は、数年前にご入居いただいたお客様の奥様だった。
カードキーを持たずに外へ出てしまい、家の中にお子様がいるまま自動施錠されてしまったようだ。
お子様は、たしか2、3歳。
玄関の前で動転する奥様の様子が目に浮かび、すぐに車を走らせた。
まずは奥様に落ち着いてもらい、ご了承を得たうえでバルコニーの窓ガラスを割って解錠した。
お子様の無事を確かめ、ホッと胸をなで下ろす。
奥様の心配をよそに、お子様はニコニコ笑っていた。
その夜、ご主人から連絡があった。
「本当にありがとう!助かりました。これからも頼りにしています」
こんな一言が、私の中に蓄積されていく。
そして、関わったお客様の笑顔を守らなければという使命感が増す。
「何かあれば、“いつでも”声をかけてくださいね」。
お住まいが完成しご入居されるとき、私がいつもお客様に言う言葉だ。
なぜ、そう伝えるのか。
生活される中で、お客様が気兼ねなくご連絡できるよう、
お客様の不安が少しでも解消されるよう、その一翼を担いたいと思っているからだ。
故障や不具合、お客様がお困りに感じるアクシデントは、
都合に合わせて起こるものではない。
ある日突然起きるからこそ、お客様は一層不安に駆られる。
ときには、
「蜂の巣があるみたいなんだけど、どうしたらいい?」
「トイレが詰まったんだけど、見にきてくれない?」
といったご相談をいただくこともある。
それらは必ずしも私の専門業務の範囲とも限らない。
それでも、お困りのお客様を放っておくことはできない。
お客様の不安やその想いに、できる限り私は応えたい。
私はこれからも、お住まいづくりのお手伝いをした者としては勿論、
人としてお客様に寄り添い、お客様の拠り所となる存在であり続けたい。