少し前に、当時担当していた分譲地の近くで10年以上前のお客様と遭遇した。
聞くところによると、どうやら家の建具に不具合があるらしい。
その場に居合わせた大工さんと足を運び、すぐに修理に取りかかる。
日頃から抱えていた不便がすっとなくなり、お客様も喜んでいる様子だった。
「ありがとうございます」。
何気ない一言が、やっぱりうれしい。
お客様との想い出と言われれば、数えきれないほどある。
何気ない会話から、今でも心に残る出来事まで。
はじめは苦手だと思っていた営業の仕事。
若い頃なんかは、とにかくがむしゃらだった。
行き詰まれば、時間も場所もなりふりも構わず、
上司をつかまえて相談をした。
そうやって目の前のお客様に一心に向き合い続け、
気づけばもうすぐ30年。
向いてない、辞めたいと思ったことは数知れずあるが、
ここでしかネクタイを締めたことはない。
不器用ながらに目の前のお客様のことを考え、
ときにはお客様に助けられ、そこに紡がれてきたのは、
単なる営業マンとお客様としてではなく、人と人としてのつながりだ。
だからこそ、担当したお客様が困っていると聞けば、自然と身体が動く。
自分ひとりではどうにもできないことでも、
解決の糸口は案外すぐ見つかることもあるし、
私はそんな糸口をすっと差し出せる存在でいたい。
今となってはこの仕事も、自分の人生を語るに欠かせないものとなっている。
こうして自分がここまでやってこれたのは、お客様に恵まれてきたから。
だからこそ、一つひとつのつながりをしっかりとこの手に、
これからも前に進み続けていきたいと思う。